モンドの読書日記

都内の某大学へ通う学生による、日本や海外の文学関連書籍を中心とした読書記録。

狂人日記 (講談社文芸文庫)狂人日記 (講談社文芸文庫)
(2004/09)
色川 武大

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色川武大(著)
『狂人日記』(講談社文芸文庫、2004/09)

1987-88年に書かれた作品。
日常的に幻聴と幻覚に悩まされている50代の男が、その病気で入院したところからはじまり、そこで知り合った同じ「病気」の女と退院し同棲するのが後半の話。
初めて読んだ色川武大の本。阿佐田哲也の名で出された本もまだ読んだことがない。
これは小島信夫の衝撃と同じくらいかも。

「自分はただの気狂いで、人格などありません。」
「そんなことはない。病人は人間失格者ではありません。私はそう思ってるし、病院もそうあつかっています。だから貴方の人格は実在します。そうである以上――」
「ありがたいが、人格があったところで気狂いは気狂いです」
(137頁)


うわー。
たとえばこんな文が急に出てきて、息が詰まった。

 自分は誰かとつながりたい。自分は、それこそ、人間に対する優しい感情を失いたくない。
(187頁)


この本の一つの極点は、ここかなと思う。

さあ、そして上の主人公の望みは、エゴだろうか?
でもそんな問いも、この本に沿えばきっと次のようになってしまう――エゴとか、エゴでないとかいうことをいつも表立って考える自分は、異常か。(「許すとか、許さないとかいうことをいつも表立って考える自分は、異常か。」(257頁))

幻覚や幻聴のなまなましさや、止めることの難しい思念(それも循環的)の微妙さがかなしいのに、また妙に生暖かさがあって泥に沈んでいくようだ。
それを読まずにいられない自分のいやらしさ。
そんな私は、主人公の、相手に「いつか捨てられるだろう」というおそれ・諦めといった思いにもまた共感のようなものを抱く。それも自分の身勝手さゆえに。
が、しかしそれが結果として現実になったときには受け入れることができるかどうか。
だが受け入れるとしても、どんな形でか。

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